
久々に書店で本を買いました。「堀田善衛 方丈記私記」ちくま文庫。ちくま文庫を買うのは21世紀初かもしれない。もう2021年も終わるのに。全集をボックスで買えたので、貧乏大学生にはありがたい文庫でしたな。今でも持っている夏目漱石や太宰治の全集はちくま文庫版です。
別に最初からこの作品を購入するつもりで書店に行った訳ではなく、歳時記のついでに入手しました。店内を歩いていたら書架から「方丈記」の文字が浮かんできて、次に「堀田善衛」と作者名が目についたんですよ。「広場の孤独」は読んだなぁと記憶が甦り、気が付いたら手にしていました。1~2ページ立ち読みして、ああ面白いなと思って買った次第です。
かつて「本」っていうのは、そういう買い方をしてましたよね?本屋には書籍との一期一会が確かにありました。個人的なことですが、本を読まなくなったというか、書物から興味を失ってもう長い年月が経ちました。当然書店に行く回数は激減です。さらに十年以上前から基本的に欲しい本はAmazonで買っていますし、今ではKindleを多用しています。
だから本との出会い、さっき書いた「一期一会」はもうないんですよ。ぼくに限ったことじゃない。売れてる本はメディアに取り上げられたものばかり。でないとタイトルすら人には届かないのが現実です。少年時代のぼくにとって書店は特別な場所でした。どれだけ読んでも読み尽くすことのない圧倒的な書物の中から、自分の琴線に触れる一冊を探し出す快感は、恍惚と表現しても大げさではなかった気がします。
中学生、高校生の頃のぼくは毎日のように書店に足を運んでは、親のツケで手当たり次第に書籍を買い求めていました。人が一生の間にどれだけの本を読むのか知りませんが、10代から20代の間で、たぶん平均の数倍は読んでいる筈です。読書を一過性の趣味にしてしまうのはもったいないと、国語の教科書に載っていた誰かの随筆に書いていましたが、見事に一過性の趣味で終わった感じです。
久々に行った書店に、あの頃のわくわく感は微塵もありませんでした。圧倒される恍惚、そんなものは皆無です。そして立ち読みした文庫本の小さな文字がちょっと見ずらいぞ?と思ってしまうほど、時は流れたんだなぁと思ったり思わなかったりした本日です。
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